ウズベキスタンのお祝い料理から見える多文化の食卓| 築地で世界のお祝い料理を楽しむ会第18回

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ウズベキスタンの食文化とは

古くから文化の要衝にあったシルクロードの交差点・ウズベキスタン。ウズベキスタンの食文化、お祝い料理とはどのようなものなのでしょうか。オアシス都市として栄えたウズベキスタンは沢山の文化が行き交った土地。その食文化は多くの歴史に影響され形作られてきました。国内で農業や羊の放牧が盛んであることから、小麦料理、麺、羊肉の料理のメニューが豊富です。

アレキサンダー大王と国民食プロフ

このお祝い料理会では、ピラフの原型ともいわれる「プロフ」を中心に、この土地ならではの祝いの食文化をズルフィヤ・ウマロヴァさんに教えていただきました。

 

本日の講師ウマロヴァ・ズルフィヤさん。
講師のウマロヴァ・ズルフィヤさん

ウマロヴァさんは自己紹介の際、息子さんのお名前はアレキサンダーさんと仰っていました。それで思い出したのは、その昔、アレキサンダー大王がウズベキスタンに遠征した際にプロフが振舞われ、それがきっかけでピラフが西に持ち帰られ料理として定着した、という話。(諸説あります)

アレキサンダーという名前を耳にしたことで、遠い昔から様々な文化が交わってきた土地なのだということを改めて感じました。

プロフとはどんな料理なのか 

さて、古い歴史をもつシルクロードの米料理、プロフ。

お祝い料理会では今まで、イランのゼレシュク・ポロ、レバノンのひっくり返しご飯マクルーバ、トルコのデュグン・ピラヴ(結婚式のピラフ)など祝いの米料理をたくさん体験してきました。中でもウズベキスタンのプロフは具を混ぜ込み炊く米料理の起源ともいわれるものです。

日本では炊き込みご飯のように最初から米と具材を合わせる料理も多いですが、プロフは具材を炒め、煮込み、最後に米を蒸し上げるという工程を丁寧に積み重ねます。その手間が、一皿の味に何層もの奥行きを生み出しているように感じます。 

鍋はプロフをつくる専用の鍋があります。具材を炒め豆やスパイスを入れて煮て、米を入れて煮て蒸して、、と工程を分けてじっくりつくっていきます。

手前二つの鍋がプロフ専用鍋。

ウズベキスタンならではのニンニクの使い方

ニンニクは包丁を入れると独特の刺激臭が出てしまうので丸ごと入れます。そうすることでホクホクしたまろやかな味わいになる、こんな野菜の使い方にも長い試行錯誤の知恵を感じます。そして後ほど朝鮮系移民によって広まったニンジン料理も登場しますが、プロフにもニンジンは欠かせない食材です。 人参の甘さ、肉や肉の脂のコクなど、さまざまな具材の味が米とミックスされて深い味わいとなっていきます。

こんな風に丸のまま入れれば臭くならない。にんじんも大事!ひよこ豆もいれます。

ご馳走料理としての羊肉

肉は牛肉も使うそうですが、ご馳走ともなれば、ウズベキスタンでは羊を食べます。急な大切な来客などの時は自分たちの羊を屠って料理する、家畜は食材であると同時に大事な財産でもあります。その羊を客人のために振る舞うということは、それだけ相手を大切に迎えるという意味でもあるのでしょう。 

プロフと言ったらやはり羊肉

そして今回、多民族国家であるウズベキスタンならではの副菜も色々紹介していただきました。

まな板を使わないで切る?

トマトのサラダ、アチック・チュチク(甘い辛いという意味)は必ずプロフに添えて、トマトの汁をかけて食べるそうです。これが爽やかなアクセントになります。

少し話がそれますが、ウマロヴァさんの野菜の扱い方が印象に残りました。ウズベキスタンでは調理の際にまな板をあまり使わないそうなのですが、片手にトマト、一方の手にナイフを持ち、トマトをあっという間にスライスします。文章で説明するのは難しいのですが、スーッスーッとトマトをカットしていくウマロヴァさんの手元に皆さんの眼は釘付けでした。(動画に撮れば良かった!)

「(まな板でカットすると)せっかくの美味しい水分が出てしまうでしょう。」とウマロヴァさん。

トマトの美味しい水分を逃さない、乾燥した地域での食文化では特に水を大切にする細やかな気配りがあります。切り方にもそんな知恵が生かされているのを感じました。

この薄いスライスをまな板なしでカット。

話を戻すと、プロフは大量の肉を食べる料理でもあり、脂の量も多いです。そこに酸味を加え爽やかに中和するのがトマトの役割かもしれません。

朝鮮系移民の料理

そして朝鮮系移民発祥のニンジン料理、マルカヴチャ。

朝鮮移民系の料理マルカヴチャ

1937年にソ連によって極東から中央アジアへ強制移住させられた高麗人(コリョサラム)によりキムチや朝鮮系レシピが多く伝わりました。そんな料理がウズベキスタンではよくテーブルに上がるそうです。

それがウズベキスタンの食文化とミックスされ元の料理とはまた違う独自のウズベキスタン料理となり定着していったようです。

ウズベキスタンの郷土菓子

そして最後に忘れてならないのがウズベキスタンの郷土菓子のチャクチャク。名前もリズミカルで面白いですよね。

チャクチャクは中央アジアで人気の伝統的な揚げ菓子で、ウズベキスタンでは結婚式やお祝いの場では欠かせないお菓子だそうです。現地にも色々なレシピがあると思いますが、試作に試作を重ねたズルフィヤさんのチャクチャクは唯一無二の味、本当に美味しいものでした。

生地をつくり薄く伸ばしてこんな風に細く切ります。
皆さんも生地をカット
カリっと揚げていきます。

蜂蜜を主体としたシロップをまとった、サクッとした軽い生地。香ばしく刻んだナッツのコクも相まって、食べ始めると手を止めることが出来ない味です。

「ついつい食べてしまうから家で作れない!笑」とウマロヴァさん。

お祝いの日に皆で囲み、つい手が伸びてしまう。そんな時間まで含めて、チャクチャクは祝い菓子なのだと感じました。 

多文化が育まれた食卓

今回の料理を通して印象に残ったのは、ウズベキスタンが「交わる国」だということでした。古くからオアシス都市として栄え、シルクロードの要衝として多くの人や文化が行き交い、層の厚い文化が育まれました。プロフのような古くからの料理が受け継がれる一方で、朝鮮系移民の食文化も日常の一部となっています。

一つの食卓の中に、乾いた気候に合った食材の活かし方や長い歴史の積み重ねが自然に息づいていることを感じました。

プロフ出来上がり、盛り付けです。
揚げたチャクチャクをバットに広げ蜜をかけて冷まし切り分け。
プロフ、アチックチュチック、マルカヴチャ

私は都会育ちではないと仰ってた講師のウマロヴァさん。

シルクのターバンを巻いてらっしゃる姿の後ろに、サマルカンドへ続くシルクロードの風景が広がって見えるような気がしました。

(文・高田桃子 写真撮影・小端アキコ 無断転載はご遠慮ください。)