​Think EAT LABブログ

優しい味

ひな祭りにちらしずしをつくった。

実家では母はちらし寿司ではなく海苔巻をつくっていた。昔からそう。卵や煮たシイタケ、アナゴ、キュウリなどを具にした中巻きサイズの海苔巻である。それを切ってピラミッド状にお皿に盛り付ける。献立は海苔巻とお吸い物、なにかお浸し、そんな感じだった。


 毎年そうだったから、ひな祭りは海苔巻を食べるという認識を私は長いこと持っていた。ところが周りを見回すと、ひな祭りに海苔巻を食べる人はあまりいない様子。それほどポピュラーじゃないのかもと気が付いて人に聞いたことがある。

「そんなものは食べない、ひな祭りはちらし寿司でしょ。」という答えが大半だった。


 母の出身は大阪だけど、途中で千葉に越したり、また大阪に戻ったりしている。どこかでそうなったのか?それとも昭和40~50年代くらいはひな祭りといえば海苔巻だったのか、父はちらしよりも海苔巻なんて全然言いそうにないタイプだし、どうして母は海苔巻を作ってたのか分からない(あ、死んでません。聞けばよいだけですが笑。)各地ではどうなんだろうか?


で、私はちらし寿司より海苔巻が好きなのかというと、そういう事でもなくて、いや、家で作る海苔巻もちらし寿司も大好きなんだけど、ちらし寿司の方が簡単なので、今年は蛤のお吸い物とちらし寿司をつくった。来年あたりは初心に戻って海苔巻でも良いかもね。



さて、ちらし寿司は、多分どこかの時点で変わってきたと思う。うちの娘くらいの年齢だと、ちらし寿司というのは、酢飯の上に沢山の寿司ネタが乗っている料理という認識なのだけど、それは寿司屋のランチとかデパ地下やスーパーのお総菜コーナーで売ってるちらし寿司の事じゃないだろうか。それが良くないとか「否、こんなのちらし寿司じゃない!」とは思わないけど、それは寿司ネタ丼であって、家で作るちらし寿司とは別物なのだ。



 ちらし寿司をテーブルに並べて、娘と食卓を囲んで食べ始める。私は自分で作ったものでも大概めちゃめちゃ旨いなと感心して食べている能天気な幸せ者なので、今日もちらし寿司を頬張りながら、なんて美味しいんだろうと思って食べていた。この美味しさは、寿司ネタ丼のちらし寿司では味わえない。そう思って、

「外で食べると美味しいもの、家で食べると美味しいものってあるじゃない?ちらし寿司って家でつくって食べるのが絶対美味しいよね?」と娘に言うと

「はぁ、まあまあそうだよね。」位な薄い反応である。

「でも京樽のちらし寿司もうまいよ。」なんてことも言う。なんだと?!

 私は反論した。というか、このやり取りをしている時に、家のちらし寿司の美味しさとは何なのかが急に分かったのである。

「いや、外で食べるちらし寿司もそれはそれで美味しいよ、でもさあれは別物だよ、寿司ネタのちらし寿司って優しい味ではないじゃない。家で食べるちらし寿司の何が美味しいって優しい味なんだよ、すーごく優しいよ。」

娘は、はぁ、そうですかね良かったですね、くらいの返事で黙々とお代わりしているのだ。そう、反応うすい割にお代わりしてるじゃん!!


ちらし寿司の味って一言で言って優しいと思う。シイタケやレンコンやニンジンを薄味に煮付けたものとほんの少し甘い酢飯と錦糸卵のすべてがふーんわりしていて、生の刺身じゃなくて、酢じめのこはだとか(私はサーモン乗せたけど)が味を締める。そんな味わい全体がひな祭りに合っている。ぼんぼりに灯かりを灯したくなる。酢飯がほんのりと温かいのもプラス優しさ加点50点くらいいく。もう本当に優しすぎるのだ、家のちらし寿司は。


この「優しい味」という表現が、必ずしも手ばなしの誉め言葉ではない場合も多いらしくて、私の場合、優しい味好きなので「この味優しいね。」といった時100%褒めているのだけど、たとえば新進気鋭のシェフがいるレストランにグルメな人が食べに行って、「この味優しいね。」と言ったら、それは誉めニュアンス100%ではないのですよね?

その辺りの話しはまた別の興味深い問題だけど、とにかく私は家のちらし寿司には、家で食べたい優しい味ナンバー1を進呈したいのです。

よろしゅう、おあがり。



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