こんにちは。
5月13日、築地のキッチンスタジオでモロッコのお祝い料理会を開催しました。
今回のお祝い料理は“モロッコの鶏の丸焼き”。鶏一羽の丸焼きです。
そして“発酵レモンのチキンタジン”とモロッコのおふくろの味“ハリラスープ”もつくりました。
鶏の丸焼きというと真っ先に思い浮かぶのは欧米の鶏の丸焼きですよね。日本でもお料理好きの人ならクリスマスに焼くこともあるでしょう。とはいえ鶏の丸焼きは日本人にとっては非日常です。大きな鶏の下ごしらえをするだけでも一大事、手間暇かかりそうだし、うまく焼けるか心配…。よっしゃーー頑張るぞーー!!と気合入れてつくるというイメージで、なかなか手を出しづらい食材ではないでしょうか・・?
しかしそれを良い方に裏切ってくれたのがモロッコのモロッコの鶏の丸焼きです。お祝い料理ですがより家庭料理に近くヘルシーでもありました。
今回は日本とモロッコの料理することの感覚の違い、をたくさん学びました。講師のアノア・サンフィさんと通訳で奥様のももこ・サンフィさんの掛け合いは妙にほっこりするしリラックスさせられるしで、お二人の自然な魅力に引き込まれた方も多かったです。
さてではモロッコのお祝い料理をつくりはじめましょう!
アノアさんは一発で鶏を見分ける
日本のスーパーでは丸鶏はほぼ置いていないので、今回、新大久保のハラルショップで購入しました。新大久保のジャンナットというハラルフードを置いているインド系の食材店です。丸鶏はサイズごとに売られており、1羽700gの小さめのものを購入しました。小さいサイズというだけでも少し料理のハードルが下がりますね。タジンに入れる鶏もも肉も別途用意したのですが、こちらは一般のスーパーで購入。
するとアノアさんは、これはハラール、こっちはハラールじゃないねって見ただけで分かるんです。すごくないですか?
どうしてなのか尋ねたところ、ハラールの場合は屠殺の方法が違うので首を見れば分かるのだそうです。骨付きではないもも肉には首はありませんが(リアルな表現ですみません)ハラールは血を嫌うので血合いの処理具合をみれば判別できるのだそう。
さらりと言うところがすごいです・・!
鶏肉は鶏肉という製品ではなく生き物であるという当たり前のことを認識させられます。
私の年代だと子供の頃に鶏を飼っていたおうちが近所にあるというのは、東京都心でもそれほど珍しくはなかったです。早朝どこかでコケコッコー!とにわとりが鳴いているのはわりとある光景でしたが、でもいつしかそういうことはなくなりましたね。
そんなことを急に思い出しました。
鶏肉は水洗いすべし!!
各国料理を教えていただくときによく言われるのが「日本人は買ってきた肉を洗わないけどどうして?!」ということです。野菜は洗うけど、肉って洗うの・・?と思いますよね。私も初めて言われたときは驚いたのですが、洗わないとキレイになって味も美味しくなると言われて試したところ、本当に美味しかったです。
なんで日本人は肉を洗わないのか、その理由について色々考えたのですが、日本では肉を部位別に売ることが多いので、すでに多くの人の手を介していて洗われていることが前提の感覚なのではということ。まぁ多くの手を介しているのならより洗った方が良さそうですが・・。ともあれ、部位別に小さくなればなるほど、何というか、洗うのはおかしな行為になってくる、たとえば薄切り肉を水道水でびしゃびしゃ洗うとうま味も栄養も落としてしまいそうですよね。
売っている肉も元々生き物ですし、さまざまな菌が潜んでいる可能性は野菜より多いかもしれません。「日本の畜産の環境は整っていて菌などない!!」という意見もあるでしょうが、これは感覚の話で、売っている肉=生き物という気持ちが日本人の私たちにはどこか薄いゆえにあらわれる感覚の違いという気がするのですが、どうでしょうか。
そういうあれこれとは別に洗った方が本当に美味しくなるのでぜひお試しあれ。
これがモロッコの鶏の丸焼きです!
モロッコでも鶏の丸焼きは日常料理ではなく特別な食なのですが、言ったように欧米風とだいぶ違います。モロッコでは結婚式や赤ちゃんが生まれて1週間め、久しぶりのお客様が来たときなどに作るものだそう。赤ちゃんが生まれて1週間めというのはモロッコではとても大事な日で、誕生日のお祝いはこの日1回しかしないそうです。
つまり一生に一度の誕生祝の料理なのですね。これぞハレの日の料理!
さて、こちらがモロッコの鶏の丸焼きの工程です。
モロッコでよく使われる4種のスパイスはインド料理でもよくつかわれるもの。インド料理から辛いスパイスを抜いた感じだそうで、実は共通点も多いとか。
私は辛いものが体質的に苦手なのですが、ハーブやスパイス自体は好きなのでモロッコや中東の料理は体質にも合っており大好きです。
急に出来上がり写真ですが、柔らかく煮た鶏肉を最後にオーブンで焼くのです。スパイスなど塗った鶏をそのままオーブンに入れると思っていたのに煮だしたから驚きました。煮てから焼くので出来具合はホロホロと柔らかい。モロッコの鶏の丸焼き出来上がりです!面白いのは鶏の丸焼きには必ずポテトフライを添えるのだそう。
アノアさん特製発酵レモンとは
さてタジンですがタジンと言えばタジン鍋。タジン鍋でつくられる料理の総称がタジン料理なのです。なので同じものを日本の土鍋でつくっても正式にはタジンと呼べません。土鍋、良さそうですけどね。
この日朝から生憎の大雨に見舞われましたが、アノアさんご夫婦はタジン鍋を5つ持参してくださいました!ありがとうございました。
タジン鍋でつくる料理の特徴は水を使っていない事。それが分からないほど出来上がりは水分たっぷりですが、全部食材から出る水分です。
モロッコは乾燥した土地なので水は大切です。必要以上に水を使わないように、食材のもつ水分を大切に、そういう理由でタジン鍋を使うようになったのかは分からないですが、それも大きな理由にきっと違いありません。水を加えずに食材のもつゆっくり煮ていくことでモロッコの伝統料理が出来たのですね。
今回のタジンの発酵レモンという言葉、気になった方も多いのではないでしょうか。
レモンに塩をまぶして瓶に詰めて発酵させるモロッコの塩レモンというものがありますよね。ですが、アノアさんの塩レモンはひと味違うのです。
通常の塩レモンは塩とレモンだけで発酵させます。発酵が進むにつれてレモンが黒っぽくなってしまうのが難点でもありました。ですがアノアさんの塩レモンはお酢とオリーブオイルも入れて発酵させるので写真のように数か月経ってもきれいなレモン色を保っています。これだけ綺麗な色を保てているのはすごい!
発酵レモンの酸味が料理の良いアクセントになりますね。インドならタマリンド、日本なら梅干しという感じでしょうか。こういう酸味のある食材はスープとかサラダなどモロッコ料理でなくても色々使えそうです。
モロッコのお祝い料理出来上がり!!
鶏の丸焼き、レモンチキンタジン、モロッコの家庭の味ハリラスープが完成し、今日の料理出来上がりです。
モロッコのお祝い料理試食
その後は全員で試食、そしてアノアさんがモロッコのミントティーを淹れてくださいました。
ちなみにサーブしてもらったモロッコのミントティーには14種類のモロッコハーブがミックスされていて、この14という数はモロッコでは意味があるようなんです。
モロッコでは誕生日のお祝いは生まれて1週間目におこない、それが一生に一度のお祝いと書きましたが、生まれて14日目(2週間目)にもお祝いがあります。14の数に意味があるのはそれとも関係しているそうです。この日はそこまでしか聞けなかったのですが、また今度モロッコ料理教室に参加させてもらってそんなお話も伺いたいなと思いました。
それとモロッコのミントティーってモロッコに興味がある人ならご存じと思いますが、ミントのお茶だと思ってましたよね?ですが、厳密にミントのお茶じゃなくても今日のようなミックスハーブティーでも、モロッコで出されるお茶のことは皆ミントティーと呼んでいる、とのこと。笑
そういう曖昧さ適当さ?ほんっと好きです!
大らかな料理文化というのでしょうか。前回のイランの時も感じたのですが、その都度で臨機応変に考えるやり方が心地よかったです。
適当というよりも厳しい自然環境の中で素材や食材を大切に扱いながら、あるもので最大限の効果が発揮できるように積み重ねられてきた料理観なのかもしれません。
最後はモロッコのスライドショーや説明などもして頂いたのですが、時間がまきまきになってバタバタしてしまいました。
またゆっくり時間を取って出来たらよいな~。
アノアさん、ももこさん、ご参加の皆さん、ありがとうございました。
6月はお祝い料理会はお休みになります。
7月か8月にまたお目に掛かりましょう!!